
真珠湾の地に立った。日本語が喉の奥に詰まって、
─写真を通じて、戦争と向き合う〈私〉に向き合いたい。
小学校3年生の夏休み。テレビで流れていた若き特攻隊員の特集を見て、戦争の悲惨さを知った。あのとき画面の前で泣いていた8歳の私は、今年で23歳になる。この15年という月日の間、私は自分の足で戦争の記憶が残る街ー広島、長崎、沖縄ーを巡った。戦争の歴史を知ろうとしてきた。
でも、先日太平洋戦争発端の地であるハワイの真珠湾を訪れたとき、ようやく気が付いた。「私は戦争の歴史には向き合ってきたけれど、戦争と向き合う〈私〉には向き合ってこなかったんだ」と。青く輝く真珠湾には、日本軍の攻撃によって沈んだ戦艦アリゾナが眠っている。その光景を目の当たりにした私は、日本語が喉の奥に詰まるような感覚に襲われた。日本人であることを恥ずかしく思ってしまう自分の存在を、人生で初めて意識したのだった。
日本が未来永劫平和であるために、向き合うべきなのは過去の〈人々〉だけではなく、今の〈私〉なのかもしれない。そう思った。
では、何をしたら私は〈私〉と対話することができるのだろう。そのときに思い浮かんだのは、好きで続けてきた写真だった。資料館で一枚の写真と目が合ったとき、慰霊碑の前で祈る後ろ姿を見つけたとき・・・私はどのようにシャッターを切り、どのように心を揺さぶられるのか。戦争の記憶が残る街で撮った写真を見返してみたり、もう一度その街でカメラを構えてみたり。それらの行為を通して、私は戦争そのものだけでなく、そこに向き合う〈私〉のことを知りたいと思う。
井上 紗彩(いのうえ さあや)
大学生
静岡県静岡市出身、東京都内の大学に在学中。