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萩谷美也子

戦場に本を持って行った?
そこから始まる<私>の探索

寄贈資料を収めた古い箱を開けてみると、軍に入隊した時のモノクロ写真と「同期の桜」の歌詞が染められた手ぬぐいとともに、一冊の岩波新書が出てきました。昭和15年初版、16年発行の「生命と物質」です。戦地の兵士に岩波文庫、特に文学や哲学書が読まれたという話は聞いていました。しかしこれは文庫ではなく新書、しかも科学書です。写真の主の元兵士はなぜこの一冊をとっておき、そしてここに寄贈されたのでしょうか?サイエンスライターである私は、それがものすごく気になるのです。その謎を解くには、戦争中の出版と配本、そして読書をめぐる状況を知らなければなりません。こうやって私の自由研究は始まったのでした。

萩谷美也子

サイエンスライター

子どもの頃から本と本屋さんと図書館が大好きで、雑読は筋金入り。「一生本を読んでいたい、本を介して人とたくさん話したい」と、選んだ生業がこれでした。人と本、場所と情報、歴史と物語と時間が化学反応を起こして生まれてくる良きもの、繊細なものを味わい、つながりと広がりの妙を皆さんと楽しみたいと思っています。

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