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私には、戦地で読まれた本といえば「岩波文庫」、学徒動員された兵士が戦闘の合間にこっそり大切に読んで心の支えとする文学書というイメージがありました。
私が子どもから大学生くらいまでの時期、世の中にはあの戦争をテーマとした小説や手記、歴史書、児童書がたくさんあり、その中で何度かそのような情景に触れたことがあるのだと思います。

学徒兵にとって、本が自由に読めない軍隊生活は辛かったようで、戦地には出版界による慰問図書が配本されています。
実際に岩波文庫は陸軍の要請で兵士の慰問用に供出されていました。当時岩波文庫のどんな本が戦地に送られたのかも、岩波書店の社史に掲載されているらしく、私は1940年(昭和15年)の供出本リストを社史データベースサイトで確認しました。志賀直哉の「小僧の神様」やウェブスターの「あしながおぢさん」など、そのラインナップも興味深いのですが、ここでは割愛します。

でも、これは文庫ではなく、岩波新書。しかもジャンルは自然科学。う〜ん、なぜだろう。
そもそも岩波新書って、いつごろからあるんだろう。誰が何を意図して創刊したのだろうか。
まずは、そこから調べてみることにしました。

日本ではなくアメリカの場合も、第二次世界大戦中戦地への慰問図書は組織的に行われており、『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』 (モリー・グプティル・マニング 著/松尾恭子 訳)文春文庫という本が出ています。Webでこの本についての鼎談を見つけて読んでいると、中島岳志さんが次のように述べていました。

中島 日本でも、本を精神的な支えにした兵士は確かにいたんです。以前、岩波書店の創業者、岩波茂雄についての伝記を書くために資料を探していたら、兵士たちが茂雄に宛てた手紙がたくさん見つかった。彼らは岩波文庫を持って戦地に赴き、自分が今そこで戦っている意味づけを本、特に哲学書に求めました。〜後略〜
(「アメリカ軍兵士を支えたのはペーパーバックだった」 文春オンラインより)

そこから探したのが「岩波茂雄 リベラル・ナショナリストの肖像」(中島岳志 岩波書店 2013年刊)です。

読んでみてびっくり。岩波新書は前年に日中戦争が始まり、岩波書店に対しても激しい言論統制で発禁処分が度重なるさなかの1938年(昭和13年)11月に創刊されたのでした。
この項続きます。

萩谷美也子
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