
母が亡くなって、実家を整理することになった。人が暮らした家というものは、なんとまあたくさんのものに溢れていることか!そのひとつづつに向き合わざるを得なくなった。といってもその物量と重さに気持ちがやられてしまって、グッタリというのが本音でもあった。それまできちんと見ることがかった父の本棚の本も、じっくり考える間もなく直感的に選んだいくつかの本のほかは、結局処分してしまった。それでも、どさくさと持って帰ったモノや本が箱にいくつか。この箱を開けて改めて眺めたのは少し落ち着いてから。その中の1冊がこの本。パラパラとめくっていると、鉛筆で引かれた傍線を見つけて愕然とする。戦争のことを語らなかった父が、どんな戦中戦後を過ごしたのか?語られなかったことを知りたいという思いが、猛然と込み上げた。
「第一に国民的熱狂をつくってはいけない。国民的熱狂に流されてしまってはいけない。」『昭和史』(半藤一利著 平凡社)
これは、今を生きる私たちに向かって父が言いたかったことに違いない。
